No.236 8月23日(木)帰浜した鉄工所

横浜の歴史は埋立ての歴史でもあります。
海に土地をつくり産業を興し、
陸に住宅をつくり成長してきました。
特に戦後早々に始まった
横浜湾岸埋立て計画の中核が“根岸湾”でした。
1963年(昭和38年)8月23日の今日、
石川島播磨重工業(株)が根岸湾埋立地に機械工場建設のための起工式を行い磯子工業地帯の中核企業となりました。

 横浜市港湾局資料から

1959年(昭和34年)2月に始まった根岸湾第一期埋立事業は、
4年半の時間をかけ延べ360万平米、約107億円の事業規模で進められました。
かつては海水浴で賑わった根岸湾ですが、大規模臨海工業地帯として全て埋め立てられ
「国際港都建設総合基幹計画」が進められます。
http://www.city.yokohama.lg.jp/kowan/m-learn/history0.html

企業誘致に成功し、東芝、NISSHIN oillio、日石(現在JX日鉱日石エネルギー)そして、石川島重工業(石川島播磨重工から現在IHI)が進出します。
進出企業の中でも、この第一期根岸湾埋立地の核となった石川島重工業は、
明治時代から横浜と縁の深い起業だということご存知でしょうか?

一枚の絵はがきに描かれた官営「横浜製鉄所」が現在の石川町近くに作られます。
その後、民間に払い下げられ最終的に“石川島重工”に買取られ東京に引越します。

No.108 4月17日 活きる鉄の永い物語

当時、印刷革命が起こり「活字」製造が一大ビジネスとなります。

IT革命のようなものでしょう、新聞や雑誌は勿論企業、公官庁の文書も活字が使われるようになります。
活字で財を成した一人が「No.108」で紹介した平野富二です。
彼が東京佃島にあった水戸藩の造船所を買い取り民間企業として経営したのが石川島播磨重工の前身、石川島平野重工です。

佃島の対岸にある中央区明石町一帯は江戸の外国人居留地(築地居留地)があった場所でもあり多くの外国人、日本人が集まったところです。
外国政府関係者は不便な“横浜”より江戸城に近いこの場所を望みましたが、外国商社が横浜を離れなかったためあまり発展しませんでした。
キリスト教宣教師の教会堂やミッションスクールが多くこの地に入ったため、青山学院や女子学院、立教学院、明治学院、女子聖学院らの発祥地となります。
余談ですが、慶應義塾大学の前身は1858年(安政5年)に築地鉄砲洲中津藩中屋敷の長屋に塾を開きます。(現在の聖路加病院あたり)

この時、福沢は正式に名前を付けず「無名塾」でした。慶応義塾と命名したのは慶応4年の4月、もうすでに明治維新が始まっていた年です。
福沢は何故?消え行く時代の名前を付けたのか、興味深いところです。

(浜に帰る)

1884年(明治17年)に横浜吉浜橋から移転した石川島重工は、
1963年(昭和38年)横浜市磯子区の埋立地に機械工場を建てます。
さらに2002年(平成14年)には、本社工場だった東京第一工場(豊洲)を閉鎖し横浜に事業を移管します。
横浜製鉄所時代から120年後のカムバックです。

石川島播磨重工は、明治時代からいわゆる財閥系には組みせず独立系と呼ばれてきました。(東芝との関係から三井との関係がありましたが)

自由な経営気風の下、様々なジャンルに参入します。
総合機械メーカーとして、宇宙開発からエネルギー、海洋製品、ビル、橋梁の他様々な分野に進出しています。
一般には地味な企業ですが、ドラマチックな歴史を持つ日本の基幹企業の代表といえるでしょう。

なぜ、いま、土光敏夫なのか

http://webheibon.jp/dokotoshio/2012/06/post-2.html
解体から復興へ──石川島再建に懸ける
土光敏夫
http://webheibon.jp/dokotoshio/2012/07/post-4.html

(余談)

■ホテル「ナビオス横浜」の大錨 
万国橋交差点にあるこの錨は、石川島播磨重工業(株)横浜工場(現(株)アイ・エイチ・アイ・アムテック横浜工場)から寄贈されたものです。
1971年に建造され中近東から日本へ原油を運搬した大型原油輸送船「高岡丸」(全長316m、幅50m、深さ25.5m、載貨重量215.850KT)に備え付けられられていたものと同型のもので重量は18.27KT、長さは4.8m、幅2.9mあります。


(余談2)

石川島播磨重工業株式会社は現在、アイ・エイチ・アイ、IHI Corporation)と言いますが、IHIのH(エイチ)は
Heavy IndustriesのHです。播磨のHではありません。
確かに
Ishikawajima-Harima Heavy Industries
IHHIですね。

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