No.171 6月19日(火)虚偽より真実へ、暗黒より光明へ 我を導け

1916年(大正5年)6月19日(月)の今日
歌人佐佐木信綱(44歳)は横浜三渓園に行き、
滞在していた詩人であり思想家のタゴールと面会しました。

(タゴール日本と出会う)
1913年(大正2年)アジア人として初のノーベル賞(文学)を受賞した
インドの詩人Sir Rabindranath Tagore(1861年5月7日〜1941年8月7日)は、
1901年〜1902年(明治34年〜35年)にインドを訪遊中の岡倉天心と交流します。

かねて関心の高かった日本(人)との出会いでした。
横浜生まれの岡倉天心は、
近代日本の美術界に多大な貢献と影響を与えた人物ですが、
国内でのトラブルから再起のための充電の旅でもありました。※

開港記念横浜会館横にあります

※1898年彼の尽力で開校した東京美術学校で天心排斥運動が起き
 横山大観、下村観山らと共に学校を去ります。
No.280 10月6日(土)天心と三渓

(日本への旅)
ノーベル賞で一躍有名になったタゴールは1916年(大正5年)
アメリカへ講演の旅に出ることになります。
途中日本に立ち寄りますが、
その時すでに岡倉天心は亡くなっていました。
(1913年(大正2年)9月2日没)
天心の弟子で親友だった横山大観宅に逗留しますが、
手狭だったこともあり交流のあった原富太郎(三渓)に相談をします。
原富太郎は、養祖父の原善三郎がこの地に初めて建てた
山荘”松風閣”(伊藤博文が命名)をゲストハウスとしてタゴールに提供します。

松風閣は横浜大空襲で焼失します。
一部松風閣付属施設の遺構が残っています。

6月18日(日)タゴールは横浜三渓園を訪れ
9月2日(土)岡倉天心の命日に日本を発つまでの二ヶ月半、
横浜(日本)を堪能します。

http://www.sankeien.or.jp/

現在の松風閣(展望台)
現在は 本牧の工場地帯が広がっています
松風閣の眼下に広がる上海友好庭園(三渓園とは別)
前の丘の頂上が松風閣

松風閣滞在中、
彼は多くの三渓コレクションの代表作、下村観山作品に触れ感動します。
中でも三渓園の臥竜梅に着想を得たという弱法師
(重要文化財で現在東京国立博物館蔵)をいたく気に入ります。


弱法師は、謡曲「弱法師(よろぼし)」を題材にしたもので、
盲目の俊徳丸が梅花の下で見えないはずの落日の気配を描く様が描かれています。
このモチーフにタゴールは
 当時の植民地インドと独立に奔走するマハトマガンジーらに思いを寄せたといいます。
この観山作「弱法師」を記念にするために原三渓は、
“模写”を荒井寛方に依頼します。
これが縁で、荒井寛方はタゴールに招かれインドで絵画教授を務め、
その後の作品に大きな影響を与えます。
 ※観山の記念碑が本牧山に建っています。

(多くの人がタゴールに面会)
横山大観を初め当時の美術界、文学界の重鎮がアジア初のノーベル賞作家を訪問します。
彼が三渓園に到着した日の翌日6月19日(月)には歌人佐佐木信綱が訪れます。
また7月11日(火)には秋田雨雀、吉田絃二郎らが訪ねます。

(Stray Birds)
三渓園滞在中に 詩人として執筆活動も行います。
タゴール作品の代表作の一つ「さまよえる鳥」(Stray Birds)の草稿を執筆します。


日本を離れ、講演先のアメリカで326編からなる構成詩「Stray Birds」を発行します。
「Stray Birds」
By Rabindranath Tagore
[translated from Bengali to English by the author]
New York: The Macmillan Company, 1916
の冒頭には
To T. HARA
of Yokohama
と書かれています。
「Stray Birds」は
http://www.sacred-texts.com/hin/tagore/strybrds.htm
でどうぞ。iPod  iPad bookにもあるそうです。

STRAY birds of summer come to my window to sing and fly away.
And yellow leaves of autumn, which have no songs, flutter and fall there with a sigh.
三渓園の夏と秋の情景から始まっているように感じます。

最後に彼の言葉を 今の時代に贈ります。
虚偽より真実へ、暗黒より光明へ 我を導け

■横浜とインドの関係
参考サイト
横浜インドセンター
http://www.yokohama-india-centre.jp/

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