ここに一枚の絵があります。
葛飾北斎の富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」です。
1831年(天保2年)頃描かれたものです。
今日は 「フランス月間シリーズ2」です。
描かれた場所は、現在の神奈川区大黒ふ頭近くと推察できます。
※専門家のサイトでは、本牧沖となっている推論が多いようです。
富士山の形から推理している方もいます。
北斎は見聞イメージをデフォルメする天才でしたから、この周辺としか確定できないようです。
現代なら?と合成してみたのが下記の写真です。
この「神奈川沖浪裏」を含め、日本の版画が欧州の芸術にインパクトを与えた事は有名です。特にゴッホやマチスらに影響を与えました。
海外と殆ど区流のなかった日本で独自に発展した文化と欧州の文化が出会った舞台が当時頻繁に開催された博覧会です。
中でもパリの万国博覧会は
1855年(5月15日から11月15日)34ヶ国が参加(嘉永4年)
1867年(4月1日から11月3日)42ヶ国が参加(慶応3年)
※日本が幕末に初参加しました。
1878年(5月20日から11月10日)36ヶ国が参加(明治11年)
※シャイヨー宮を建設
1889年(5月6日から10月31日)35ヶ国が参加(明治22年)
※エッフェル塔を建設
1900年(4月15日から11月5日)(明治33年)
※グラン・パレとプティ・パレを建設
※日本政府は法隆寺金堂風の日本館を出展しました。
1925年現代産業装飾芸術国際博覧会
(4月28日から11月8日)(大正14年)
1937年(5月25日から11月25日)44ヶ国が参加(昭和12年)
と6回(プラス国際博覧会)行われています。
これに参加した事で産業振興の刺激を受け、国内でも東京上野や京都で内国博覧会が開かれるキッカケとなります。
そもそもフランスの万博は1851年に開催された「ロンドン万国博覧会」に対抗しナポレオン3世の威信をかけた博覧会でした。
この万博がキッカケとなってボルドーワインの格付けが始まりました。
(日本、パリ万博に参加)
第二回パリ万国博覧会1867年(慶応3年)は日本が初めて参加した国際博覧会です。
江戸時代は、いわば合衆国みたいな統治機構でしたので江戸幕府、薩摩藩、佐賀藩がそれぞれ出展しました。
(とはいえ江戸幕府の衰退を現すものでもありました)
出品内容は浮世絵や、陶器、漆器、金細工などの工芸品が中心でした。
この第二回パリ万国博覧会に 浮世絵を含めた「版画」が展示され、当時のパリ在住のアーティスト達の衝撃を与えたことは有名です。
「ジャポニスムの教科書」と呼ばれた『北斎漫画』はモネ、ゴッホ、ロートレックなど、多くの画家が影響を受けました。
さらに、第三回パリ万国博覧会1878年(明治11年)では、前回に引き続き日本館に注目が集まり、パリ美術界のジャポニスムに拍車をかけます。
1889年エッフェル塔建設で話題となった第四回パリ万国博覧会では、
国内で廃仏毀釈、江戸文化排除の影響で評価が下がります。
多くの「浮世絵」が日本人画商の手で輸出され、欧米でもこれらの浮世絵を入手することができるようになりました。
そして最も日本政府が力を注いだのが第五回パリ万国博覧会1900年「アール・ヌーヴォーの万博」とも呼ばれた“19世紀最後の大博覧会”です。
政府は殖産興業の威信をかけて法隆寺金堂を模した日本館を建設し、日本美術の展示を行いましたが、皮肉にもこの展示が日本美術の国外流出に一役買った事は皮肉な事です。エンターテイメントでは川上音二郎・貞奴夫妻の(ゲリラ公演)も行われ、貞奴は「マダム貞奴」としてパリ社交界にデビューする事になります。
暦で綴る今日の横浜 1月2日 ニュース芝居、最先端劇場で上演
(ジャポニスムは多分野へ)
吉田秀和に「独断的でさえあるかも知れないドビュッシーに、本当の天才を感じ」ると評させたクロード・アシル・ドビュッシー(Claude Achille Debussy, 1862年8月22日 – 1918年3月25日)も当時の画壇と呼応し印象派の音楽家と言われました。
彼もゴッホ達同様に日本・アジアにカルチャーショックを感じました。1889年の第四回パリ万国博覧会で出会ったジャワ音楽のガムランや、日本館で展示されていた版画に影響を受けました。
1905年に作曲した管弦楽曲
La Mer, trois esquisses symphoniques pour orchestre
はスコアの表紙に冒頭の富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」をアレンジしたデザインを採用します。
■Debussy: La Mer / Abbado ? Berliner Philharmoniker
Claude Debussy: La Mer / Claudio Abbado, conductor ? Berliner Philharmoniker / Recorded at the Berlin Philharmonie, 24 May 2009
http://www.youtube.com/watch?v=4240QMQ1jhU
■Debussy – “La Mer”: “Play of the Waves”
Second movement of Claude Debussy’s “La Mer” (“The Sea”): “Jeux de vagues” (“Play of the Waves”).
http://www.youtube.com/watch?v=3o8uUP0lS9c
直接この絵に曲が影響されたかどうかは議論があるようですが、ドビュッシーにとって浮世絵、そして“マダム貞奴”の妖婉さは、当時のパリの東洋趣味を象徴するものであったことは確かなようです。
(フランス月間2012)※終了しています
ボルドー音楽祭
Musiques Festiv’ in 横浜 2012 ドビュッシー・イヤー
http://www.institut.jp/ja/evenements/11882
■6月30日(土)16時
会場:トレッサ横浜
入場無料
■7月2日(月)19時
会場:横浜みなとみらいホール
料金:会員3,800円、一般4,000円