No.159-2 6月7日(土) 三井物産ビル

開港場のある5つの都市は「もののはじめ」が大好き。
というか、お初好きは徳川時代の“江戸っ子”気質から?
真偽の程は専門家に任せるとして…。

今日は横浜開港場に現存する「お初」を一つ紹介しましょう。
日本初の鉄筋コンクリートビルディングが横浜にあります。
(正確には「日本初の鉄筋コンクリート製オフィスビル」らしい)
1911(明治44)年、日本大通り中程に建った「三井物産横浜支店」です。

日本大通旧三井物産ビル<旧三井物産横浜支店>
このビルなら知ってるよ!という方も多いでしょう。
この「旧三井物産横浜支店」は、「震災・戦災・占領」という横浜の危機を幾度となく乗り越えてきた建造物の一つです。
冒頭「旧三井物産横浜支店」は、
1911(明治44)年、日本大通り中程に建ったと紹介しましたが、実は半分が明治時代のもので残りは昭和に入って増築されたものです。
外観を観る限り全く違和感のない明治の設計意匠をそのまま活かしています。
歴史性(古さ)でいえば、前年の1910(明治43)年にこの建物の裏手にあたる場所にレンガとコンクリートを使って建てられた「三井物産倉庫(現 日東倉庫)」が現存しています。
→この日東倉庫が今 解体の危機にあります。残念ですね。(20140731)→解体されました。

日東ビル(旧三井物産倉庫)
インフォメーションが無いと見過ごし通り過ぎることの多いこの倉庫、明治から建っている歴史的建造物です。
明治の建造物が現役で存在していることに驚きと敬意を感じます。
■建築概要
☆旧三井物産横浜支店
設計:遠藤於菟、酒井祐之助
竣工:1911(明治44)年→一号館
改修増築:1927(昭和2)年→二号館
構造:鉄筋コンクリート造り4階建て
所在地:横浜市中区日本大通14
★旧三井物産横浜倉庫
設計:遠藤於菟
竣工:1910(明治43)年
構造:煉瓦造、一部コンクリート使用
所在地:横浜市中区日本大通14
※遠藤於菟(えんどうおと)
主な作品
横浜正金銀行(技師として現場監督を務めた)
帝蚕倉庫本社事務所
横浜生糸検査所

(斬新なデザイン)
遠藤於菟設計、明治の建築物としては斬新なデザインでした。華美でなくシンプル・質素なスタイルは100年経っても現在を感じます。
同時代
1917(大正6)年7月1日に開館した開港記念横浜会館(現在は横浜市開港記念会館)と比較すると使用目的は異なるがシンプルさが際立っています。
同時代の商業ビル建築デザインとして比較してみると意匠のシンプルさは良く判ります。
旧兼松商店本店「日濠館」(現・海岸ビルヂング)

■少し横道に逸れます。
建築家 遠藤於菟の作品は残念ながら殆ど残っていません。

http://modern-building.jp/endo_oto.html
ここでも横浜の作品しか紹介されていませんが、
三井物産横浜支店造築設計とほぼ同時期(大正14年)に北海道札幌の老舗丸井今井本店ビルの設計を担当していることに驚きました。
(丸井今井本店ビルは連続改築のため原型を留めていません)
丸井今井札幌本店
「丸井今井」は輝かしき北海道の歴史を刻んできた老舗百貨店でした。
残念ながら経営破綻し現在は三越伊勢丹HG傘下となっています。
No.462 北海道と横浜を結ぶ点と線2

このブログで少し紹介しましたが、丸井今井は 北海道・新潟そして横浜を結んでいます。
機会があれば追跡したいテーマです。

(竣工当時)
さて、この三井物産横浜支店の竣工当時の姿(一号館)を観たいと思っていました。
現在の姿は、昭和2年に震災復興を兼ね造築(二号館)・一号館を改修したものです。
ほぼ竣工当時の姿を守っているとのことですが、どこか変わっているのではないか?

一号館だけのときは正面玄関が日本大通脇にあったのが、二号館が造築されることで日本大通側になったようです。よく見ると 一号館と二号館は完全に左右対称ではないことに気がつきます。
微妙に意匠が変わっている。壁面等はどうなんだろう。
手元にある資料を引きずり出しましたが現在の写真しかありませんでした。
ところが
たまたま まとめ買いしてあった大量の戦前絵葉書の中からこの一枚を発見したのです。

横浜関連雑資料023三井物産横浜支店の竣工当時のものだとは当初気がつかず見逃していましたが、再度拡大してみると確かに三井物産横浜支店であることが判りました。
lig_mituiビル

lig_横浜三井ビル表面BW024撮影時期は「ハガキ表面」から大正7年以前であることは推定できます。

lig_窓アップ lig_倉庫

一号館の最上階の窓のデザインは現在のものと異なっています。
また倉庫に関しては、用途が変わったのかなにか換気口のようなものが窓から出ていることが判ります。

この画像からもう少し新たな発見があるかもしれません。

→次回へ

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