No.109 4月18日 品川の名人濱に死す(加筆修正)

本日もまた七転八倒ですが、短時間でまとめました。
上手く伝われば幸いです。
初めは1897年に竣工したみなとみらいの二号ドックか、市大医学部の話にしようかなと思って準備してましたが今日もまた、昨日の雷雲のごとく突然発見した一枚の写真から始めます。

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弘明寺散策で撮影した一枚
横浜は(私も常套句で)開港以来150年の歴史と使いますが、

横浜港周辺部は中世から栄えていました。
特に横浜最古の八世紀に建立された「弘明寺(ぐみょうじ)」あたりは門前町として江戸時代賑わいました。
No.409 二国五郡物語

No.410 横浜最古の寺周遊(前編)

No.411 横浜最古の寺周遊(後編)

ということで先日「桜チェック」に行った際、弘明寺境内に二つの落語家の記念碑を発見しました。

「四代目橘家圓蔵」「金川志ん馬」の碑です。
写真からこの二つの碑の一つ「四代目橘家圓蔵」の碑が建立されたのが1922年(大正11年)4月18日と判りました。

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この「四代目橘家圓蔵」をめぐるエピソードを紹介しましょう。

四代目急逝)

1922年(大正11年)2月の頭、
伊勢佐木町にある「新富亭」という当時人気の寄席小屋で高座をトリをつとめていた四代目橘家圓蔵が口演中に倒れ数日後の2月8日に亡くなります。
葬儀の後、
四代目橘家圓蔵の碑が、弘明寺に関係者の手で建てられます。
施主は四代目圓蔵を継いだ五代目(圓窓)と、関内の名妓(圓蔵の愛人)中山千代、外門弟一同となっています。
正妻ではなく横浜の愛人が施主になってしまうとは時代ですね。(正妻も吉原の元芸者)

(品川の名人)

四代目橘家圓蔵は「品川の圓蔵」「品川の師匠」と呼ばれ、
作家芥川龍之介をして「この噺家は身体全体が舌だ。」と感嘆させた名人でした。
噺が上手いだけではなく「品川の師匠」は、門下(弟子)の育成に力を入れ、多くの有能な噺家を育てます。
上方落語との交流にも尽力します。
上方落語を東京落語の一つのメニューとして定着させた桂小文治は、
東京で1915年(大正5年)「2代目桂米丸」を襲名し活躍します。
圓蔵が彼の才能をかわいがり上方から東京に席を移した当時珍しい噺家でした。

(伊勢佐木町、新富亭)
横浜新富亭は現在の伊勢佐木町2丁目8番7号、ハマ楽器ビルのあたりに明治30年に建てられました。
経営者の名は竹内竹次郎(修正)、当時としてはかなり珍しい木造三階建てで、野毛山や山手からも大きなお寺のように見えたそうです。
屋号は丸に竹の字で、定員680名ですが大入りのときは千人を超える混みようだったそうです。

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右奥が関内方面です
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1922年(大正11年)2月
急逝した「品川の圓蔵」の代バネ(トリの休演の穴埋め)を三日務めたのが(後の)名人六代目三遊亭圓生でした。
彼にとってこの新富亭は9歳の時に義太夫の初舞台を踏んだ因縁の高座でした。
そして四代目「品川の圓蔵」を継いだ五代目が圓生の養父圓窓というから縁は異なものです。
ちょっとややこしいですが おわかりですか?
四代目橘家圓蔵が高座で倒れた大正11年の五月、この新富亭を「吉本興業」が横浜の拠点として買収し「横浜花月」となり三遊亭圓生もここの看板を背負う人気噺家となります。

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右方向が関内駅、花見煎餅のみ現存してます
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■合従連衡
小さな派閥抗争に明け暮れていた当時の落語界に組織化の波が押し寄せます。
「吉本興業」の後押しで広く芸人が集まって設立されたのが、
「日本芸術協会」現在の落語芸術協会です。
現在まで様々な離合集散を繰り返しますが、落語協会(会長・柳家小三治)と並ぶ二大団体として現在にいたります。
落語芸術協会は何故か横浜と縁が深く、
横浜出身の4代目桂 米丸とか
横浜出身の桂歌丸は現在落語芸術協会会長と「横浜にぎわい座館長」を務めています。

(横に並ぶ「金川志ん馬」の碑に関して別な機会にご紹介します。
新富亭を巡る面白いエピソードも発見しましたので改めてまとめてみます)
→まだ手つかずです。

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