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No.190 7月8日(月)パブリック・ディプロマシー

1958年(昭和33年)7月8日の今日、
伊勢佐木から横浜公園に移築された米軍用の室内運動場フライヤー・ジムの接収が解除された日です。
横浜市中心部の大半、市内各地を接収していた米軍の「文化戦略(パブリック・ディプロマシー)」の一コマが終わりを告げました。
その後12月23日、フライヤー・ジムは改修、改築され「横浜公園体育館」と名称変更します。
接収時代を知る人たちはその後も相変わらず「フライヤー・ジム」と呼び続けたそうです。

1972年(昭和47年)3月5日に老朽化で取り壊され「横浜公園」全体が改修整備されます。

フライヤージム
横浜公園脇にあったフライヤージム(横浜市史資料)
 
「アメリカは文化と一緒に戦争している。
 最前線にも図書館の部隊がいたんだ。」
昭和18年大学卒業と同時に兵役に就いた父が
私に戦争を語った時の印象的なフレーズです。
終戦と同時に横浜一帯に進駐したアメリカ軍により、
占領政策は文化戦略と一緒に始まりました。
厚木に降り立ったマッカーサーはそのまま横浜へ直行

1945年(昭和20年)8月、横浜はいち早く<米軍接収の時代>に入ります。
占領されたまま取り残された「沖縄」は別にして、
日本の接収地面積の7割が横浜エリアに集中し、
建造物の接収も6割が横浜市内にあり、
その6割が長期の接収となりました。
横浜市中区中心部(関内地区と横浜港)は接収が集中し74%が治外法権エリアとなっていたため横浜の経済復興が大幅に遅れることになります。
逆に、かつての幕末開国時のような“居留地”的アメリカ文化にどっぷりと浸ることになります。
現実に多くの米兵及びその家族、関係者が市内で憩いの場を求め、横浜の街はそれを受け入れ大いに賑わいました。

(音楽というパブリック・ディプロマシー)
進駐軍は、横浜に司令拠点を設けると文化の拠点も物色します。
伊勢佐木界隈が集中的に米軍用の施設として接収と新築により整備されていきます。この周辺は戦前から繁華街したから接収解除に伴い住宅というより歓楽街に適していたのかもしれません。
戦後 短期間ですが、伊勢佐木(若葉町)には米軍の軽飛行場がありましたから騒音も大変だったと想像できます。
焼け残った伊勢佐木通りのオデオン座は接収されて「オクタゴン劇場」と名を変えます。
light_20150424120801_001「火陽」と「ゴールドスター」といったダンスホールが開店し

ハマジル(横浜ジルバ)の発信源となしました。
元町には「クリフサイド」、馬車道には「オリンピック」、紅葉坂には「サクラポート」がオープンし、街はサウンドに満たされます。
戦中に封印していた音楽を戦後いち早く開封した人たちもいました。
野毛の吉田さんは復員してすぐに
 「ちぐさ」を復活させます。

横浜ジャズ物語

馬車道には牧野さんの「三春」が開店します。

馬頚楼雑記

【占領の風景】関外飛行場
http://tadkawakita.sakura.ne.jp/db/?p=12874

進駐軍の計画で足りない施設が大型劇場でした。
スポーツを中心にした多目的ホールが絶対的に不足していました。
そこで進駐軍は大型多目的ホール「フライヤージム」を伊勢佐木町「オクタゴン劇場」の前に作ります。
長者町5丁目あたりに建設され広さは837坪ありました。
ここは体育館と同時にホールとしても使用され、様々なプログラムが行われます。

1950年(昭和25年)12月17日
横浜交響楽団がベートーベンの第九演奏会をここフライヤージムで開催します。
これはアマチュア・オーケストラ(市民交響楽団)初の第九演奏となり
以降定期公演となり毎年12月の第九が定着します。
※戦後の初演は
日本交響楽団(現NHK交響楽団)が1947年(昭和22年)12月9、10、13日にレオニード・クロイツァー指揮で3夜も第9の演奏会を開催して観客を集めました。

「フライヤージム」は体育館ですから卓球、バスケット、ボクシング、空手の他プロレスの興行も頻繁に行われ、多くの観衆を魅了しました。
柔道家からプロレスラーに転身した
遠藤幸吉の初試合はここフライヤージムで行われました。
そして、
朝鮮戦争もほぼ休戦状態となった1951年(昭和26年)頃から市内の接収解除が徐々に加速される中、フライヤージムの地権者が返還を要求し進駐軍は接収を解除し
1953年(昭和28年)12月20日、横浜公園に移築します。
この時横浜公園の「新フライヤージム」のこけら落としを飾ったミュージシャンが
ジャズの天才ルイアームストロングでした。

No.96 4月5日 開港ではありません開国百年祭

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