No.377 1月11日(金)花鳥風月のまちづくり

都市の(どぶ)川がしかたのないことだと誰しもが思っていた頃、
川の再生を生涯の仕事とした一人の横浜市職員がいます。
森 清和さん。
川の再生に関わっている人達の間では伝説の人です。
ここで 彼の業績について少しですが紹介しておきましょう。

nn-E6-A3-AE-E3-83-A1-E3-83-83-E3-82-BB07

元横浜市環境科学研究所 主任研究員だった森 清和(もりせいわ)さんは2004年(平成16年)1月11日の今日、61歳で惜しまれるその生涯を閉じます。
2003年に横浜市を定年退職後も市民団体を組織し都市の川の再生を生涯の仕事にしようと活動を始めた矢先の大きな挫折であり、
日本の環境保全活動にとって多大な痛手でした。

(森 清和さんについて)
情報量が少ないですが、森 清和さんのWikipediaです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/森清和

森さんの業績に関する代表的参考資料は
横浜型エコシティ研究報告「花鳥風月のまちづくり」
2002年3月発行
環境研資料 No.146
A4版・122ページ
PDFでダウンロード可能です。
http://www.city.yokohama.lg.jp/kankyo/mamoru/kenkyu/shiryo/pub/pub0146/
ここに集約されています。
このレポートの
第5章 提案と課題「花鳥風月のまちづくり」
冒頭部分を引用します。
■これまでの、ことに高度成長期以降の横浜の都市づくりは、自然地の人工改変を基本とし「計画的開発」という名目のもとに、六大事業を中心に行われてきた。多くの人が若干の疑念は持ちつつ、乱開発に対抗するためには、次善策として計画的開発もやむをえない、そういう認識を持っていたように思う。しかし乱開発を防げなかったし、大きなつけが残された。財政問題、都市問題、環境問題の深刻化である。しかし依然として開発動向は失われていない。一日も早く軌道修正する必要がある。
横浜の活力と魅力を維持し、再生していくには、持続的成長を都市形成の柱とする以外にはない。それもスクラップ・アンド・ビルド方式ではなく、横浜の生態的都市構造に根ざした都市形成である。言うなれば、「花鳥風月のまちづくり」である。こういった言い方は、直感的で研究や行政にはなじまないかもしれないが、いまはそういった市民的な直観や感性を重視し、そこから出発する時期に来ていると考える。言い換えれば、都市政策を転換するためには、その前に行政のスタンスの転換が必要と言うことである。

nnyokohama-E5-9C-9F-E5-9C-B0-E5-88-A9-E7-94-A8-E3-81-AE90-E5-B9-B4

■森さんは研究者、専門家、技術者ですから
川の問題点を指摘し、提言したのは当たり前といえば当たり前です。
しかし、彼の活動の視点はその専門性を活かした
人との関わり方にあります。
森 清和さんが亡くなられた後、追悼の意もこめて出版された
「花鳥風月のまちづくり―こころと水辺の再生を」

nnWV100007


花鳥風月編集委員会編 中央公論事業出版発行
1500円 現在品切れ 古書あり
の冒頭に書かれている「ハグロトンボの章」に
彼の人となりが集約されていますので、引用させていただきます。
「森 清和は、いわゆる有名人ではなかった。しかし、その交友関係や交際範囲は、全国に拡がっていた。役職につかない公務員ではあったが、一介の公務員ではなかった。研究者ではあったが、研究室にじっとしている人でもなかった。川などの水辺や自然を大切にしようというまちづくり活動には、縁があれば熱心に関わりあちこち精力的に顔を出す。だが、市民活動のリーダーのような存在になろうとはしなかった。水辺の自然を愛したが、ナチュラリストを標榜することもなかった。水辺をめぐる話題になると、その魅力や不思議を熱っぽく語った。雄弁ではなかったが、話しをしているうちに周囲の人たちを何となくその気にさせる独特な雰囲気を持っていた。」

(横浜だからこそ)
横浜には、大きな河川がありません。確かに二級水系「大岡川」河口に横浜開港場は開けましたが、水力発電所もダムのない一級水系「鶴見川」が市内北部を流れ、南西に「境川」の他全部で8つの水系58の支流がある河川規模としては小さい自治体です。
東海道筋の宿場町の他は、開港後に大きく発展し
戦後は一気に浜と海辺を失ってしまった街です。

nnka-map

(よこはまかわを考える会)
一時期川の汚れ日本一だった「鶴見川」の再生という大きな課題があったからこそ、川を考える動機が高まったといえるでしょう。
1982年2月に森さんと有志が集まって「よこはまかわを考える会(略称かわの会)」が結成され、現在も緩やかな連携をとりながら活動が継続しています。
この会が森さんの活動母体となり、その後の意思を継承する会となっています。

よこはまかわを考える会
〒231-0063 横浜市中区花咲町1-48-3 ロゼ桜木町901
花鳥風月研究室
事務局 TEL, FAXは非公開です。
特徴は代表者・規約を決めずプロジェクト方式のフラットな運営
月一回の広報紙を発行しています。

nn-E4-BC-9A-E5-A0-B1


「全国川の日ワークショップ」
http://www.mizukan.or.jp/kawanohi/kawanohi.htm
毎年7月7日は「川の日」です。この日に、
「川の日」ワークショップが1998年以来開催されてきました。
この全国川の日ワークショップを創設したのが森さんで、現在森さんを記念して森清和賞を設けられています。

ごく一部の紹介ですが、森さんの活動に
横浜の誇りに感じます。
明日は
このテーマから 派生して
横浜の川を語ってみたい!?と思います。

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください